2026.03.18
3歳児健診の現場では、子どもの身体的な発達だけでなく、「強み」や「課題」といった発達特性をどのように見立て、どのように関係者(保護者や保育士・小学校教諭など)で共有し、子どもの特性にあった子育て・教育環境の整備に役立てていくかが大切なテーマになっています。
埼玉県本庄市では、エフバイタル株式会社が開発した発達支援アプリ「Baby Track Navi」をトライアル導入し、健診のDX化と子どもの発達の可視化という二つの取り組みを進めてきました。本記事では、その取り組みの内容と、現場で見えてきた変化をご紹介します。
◼️本庄市が向き合ってきた課題
3歳児健診の現場には、全国の自治体に共通する課題があります。紙ベースの問診票運用による自治体職員の業務負担、子どもの身体面だけでなく精神面の発達に関する特性の把握、そして経験年数の異なる医師や保健師さんをはじめ、保護者や保育士などの関係者にどのように情報を伝えるかというコミュニケーションの困難さ。
本庄市では、これらの課題を丁寧に整理しながら、今後の5歳児健診開始を見据えた段階的な体制づくりにも取り組んでいます。
特に印象的なのは、本庄市の保健師さん一人ひとりが「保護者の方と対話する時間」をとても大切にされている点です。「子どもと保護者一人ひとりにより深く寄り添いたい」── そんな現場の思いを起点に、デジタルの力で運営を見直していく土壌が、本庄市にはすでに整っていたのです。
◼️活用したツール「Baby Track Navi」のご紹介
本庄市が活用されたのは、エフバイタル株式会社が開発した「Baby Track Navi」(BTN)です。
BTNはスマートフォンから利用できる発達支援アプリで、保護者の方がSDQ(Strengths and Difficulties Questionnaire/子どもの強みと困難さを測る国際的な質問紙)等の発達質問紙へ回答、及び家庭での様子を動画に撮影すると、子どもの強みと課題を整理した発達レポートが自動的に作成される仕組みになっています。
特徴的なのは、保護者向けと保健師さん向けで内容を最適化した2種類のレポートが用意されている点です。
保護者の方にはお子さんの理解を深めるための情報を、保健師さんには支援につなげるための専門的な視点を ── 同じデータから二つの価値が届く設計になっています。また、エフバイタル側はお名前などの個人情報を保持せず、データは自治体側で管理する仕組みとすることで、プライバシーにも十分配慮した運用が実現されています。現場で安心して使えるツールが、丁寧に整えられているのです。
◼️実施内容と、現場に生まれた変化
本庄市では、3歳児健診の現場でBTNをトライアル導入しました。健診案内に同送されたQRコードから、保護者の方が事前にBTNを活用し、生成されたレポートを当日に保健師さんが利用しながら保護者とのお話を進めます。シンプルな流れではありますが、現場には少しずつ大切な変化が生まれてきています。
▶︎ひとつめ|子どもの発達特性が「見える化」されました
まず、子どもの発達特性が「見える化」されました。SDQ等の質問紙に基づくレポートによって、これまで短時間では把握しづらかったお子さんの強みや課題が、整理された形で把握できるようになっています。
▶︎ふたつめ|保護者の方との対話の質に変化が生まれました
次に、保護者の方との対話の質に変化が生まれました。レポートが「お話のきっかけ」となり、これまで話すことに難しさを抱えていた保護者の方からも、お子さんに関する大切な情報を自然に伺えるようになっています。本庄市が大切にしてこられた「保護者の方と向き合う時間」を、より豊かなものにするツールとして機能しはじめています。
▶︎みっつめ|保健師さんの間で「見るポイント」が共有しやすくなりました
さらに、保健師さんの間で「見るポイント」を共有しやすくなりました。「どこを見て、何を伝えるか」がレポート上で可視化されることで、若手の方もベテランの方も同じ視点で面談に臨めるようになり、面談の質が揃いやすくなっています。組織全体の専門性が育っていくきっかけにもなっていきそうです。
▶︎よっつめ|健診DXの第一歩を踏み出すことができました
そして、健診DXの第一歩を踏み出すこともできました。問診票のデジタル回答率は29%(第4・5回テストユース)に達し、紙運用にかかるコスト削減にも着手しています。
業務の効率化と「ケアの質の向上」を、同じ歩みの中で進めていく ── この姿勢こそ、本取り組みのいちばん大切な価値だと感じています。
◼️これから ── 5歳児健診への展望
本トライアルで得られた知見は、今後の5歳児健診の本格導入につながっていきます。子ども一人ひとりの発達を、ご家庭・自治体・専門職の方々が一緒に支えていく仕組みづくりへと、本庄市は着実に歩みを進めています。同じような課題に向き合う全国の自治体にとっても、参考になる事例になっていけたら嬉しく思います。

